FREAKS INTERVIEWサンプル

特集〜RESTART〜INTERVIEW②松村優太/止まらない進化

2026年4月26日に掲載された記事です。
2026年04月26日(日)
INTERVIEW②
止まることのない25歳の現在地
松村優太(MF/27)

photo

タイトルを手にしたことで、見える景色は変わった。
25歳になっても松村優太は立ち止まることなく、進み続ける。
ケガからの復帰戦で開始5分に記録したアシストに見られたように
積み重ねてきた経験が自信となり、一瞬の判断力を向上させ、
さらなる進化へとつなげていく。

■25歳になって、改めて考えたタイトルの意味

——4月13日に25歳の誕生日を迎えました。その日はオフでしたが、どのように過ごしましたか?

「いつもと変わらない1日でしたよ(笑)。この年齢になると、誕生日だからといって特別でもないので、『また1年経ったな』というくらいしか思っていなかったです」

——25歳。ある種、節目の年ではあります。

「常にこのクラブで(タイトルという)獲れるものを獲りたいという思いと、そこに自分自身が貢献したいという思いは、今までもこれからも変わらないですね。また、1年ごとに成長して、自分ができることを増やしていきたいという考えも」

——若いころに想像していた25歳というと、大人をイメージしていたかもしれませんが、実際に25歳になってみて思うところはありますか?

「それでいうと、25歳になるまでにタイトルが獲れて良かったなと思います。20代前半という、まだ『若い』と見てもらえているうちに、タイトルを獲るのと、獲っていないのとでは、その後の言葉の重みや説得力が変わってくると思うので。実際、24歳は選手として決して若いとはいえない年齢ですが、これからさらに自分がチームを引っ張っていく立場になったときに、何かを伝えたり、何かを発信したりするうえで、昨シーズンの経験は大きな意味を持ってくると思っています。

例えば、しっかりと1年間、試合に出続けてタイトルを獲った選手と、そうではない選手とでは、言葉の重みが違うように、24歳でタイトルを獲れたことによって、今いるアントラーズユース出身の若い選手や、これからアカデミーに入ってきてアントラーズでプレーしたいという選手たちにも、自分なりに何かを伝えていくときの財産になってくると思っています。それ以前に、6年もアントラーズに在籍していながら、一つもタイトルを獲れていませんでした。アントラーズでプレーしている以上、それは何もしていないと見られていても決しておかしくはないと思ってもいましたから……」

——昨シーズンのリーグ最終節で優勝を決め、12月10日には左反復性肩関節脱臼の手術を受けました。第7節のFC町田ゼルビア戦で復帰しましたが、早くピッチに戻るために、どのようなことを意識して取り組んできたのでしょうか?

「手術を受けたのは左肩で、足は動かせたので、ボールフィーリングや心肺機能といった懸念点はなるべく最小限にとどめようと、早くから動くことを意識していました」

——復帰した町田戦は先発出場でしたが、試合勘などの不安はなかったのでしょうか?

「不安がゼロだったかといわれれば嘘になります。復帰したばかりで、スタートからだったので。その前節(川崎フロンターレ戦)でメンバー入りはしましたが、途中出場する機会はなかったですし、その間に練習試合もしていなかったですからね。久々の試合だったので、自分自身も『どうなのかな?』と思うところはありましたけど、早い段階から動いていたことが奏功したように思います。あとは、自分が活躍するイメージを持ち、勝つことだけを考えて準備していましたけど、一方で仮にプレーの内容が悪かったとしても『復帰戦だしな』と考え、気負いすぎなかったことも良かったように思っています」

——かつての松村選手ならば、そうした試合や状況では気負いすぎる傾向がありました。肩の力を抜いて復帰戦に臨めたことも成長なのではないでしょうか?

「確かにそうかもしれないですね(笑)。試合直前のミーティングで、鬼木(達)監督からも、チーム全体に対して、僕が久々の試合になるとの話がありました。そこでみんなに対して、『無理にボールを持たせようとしなくていい』といった話をしてくれたり、僕に対しても『45分で交代するくらいのつもりでプレーをすればいい』と言って送り出してくれたことも大きかったですね。ケガによる手術後の復帰戦は難しさもありますし、それが大きな舞台になればなるほど、プレッシャーも大きくなる。でも、監督の言葉でみんなも僕の状況を理解してくれましたし、監督からの自分自身への言葉に肩の力が抜けて、自分の感覚を信じてやってみようと思うことができました」

photo

■ゴール前を見ずにラストパスを出せるイメージの共有

——その復帰戦では開始わずか5分で、鈴木優磨選手のゴールをアシストしました。

「あれは大きかったと思います。アシストを記録したことで、より気持ちが楽になりましたから」

——そのシーンでは全くゴール前を見ることなく、ラストパスを送っていました。

「あの場面は中を見ずに(クロスを)上げましたが、中を見て上げることもあれば、相手を抜き切って上げるときも、抜き切らずに上げることもあります。でも、あのクロスがゴールにつながったように、今のアントラーズは、ゴール前に強い選手がいっぱいいるので、中にボールを届けさえすれば、何かが起こるのではないかと思っています。だから、自分が(チームメートに)入ってきてほしいと思うところに上げるようにしています。きっと、そこにFWはいてくれるので。それくらいチーム内でイメージが共有できているという自信もありました」

——それだけ顔を上げずともゴール前の状況が思い描けていると?

「そうですね。具体的にイメージできています。特に町田戦では、2トップにレオ(セアラ)とキョウくん(田川亨介)がいて、左サイドに優磨くんという並びでした。だから、誰かがニアに、誰かがファーにというのは想像できましたよね。それに、こちらが顔を上げれば、相手にも中を見ていることが分かってしまう。自分も実際、守備に回ったときには、そうしたところも見ているので。ずっと顔が下がっていたらボールを取りにいけるし、顔を上げた瞬間に(ボールを奪いにいこうと)狙ったりもします。時間に余裕があって、相手DFもこっちを見ているなと思えば、逆にFWの動きを利用して、自分が動くときもありますけど、それだけ中を見ずに上げるのも駆け引きの一つだと思っています」

——なるほど。

「それにチームのミーティングでも自分が上がっていくタイミングについては共有されていますからね。あの町田戦は、『まさに』でしたけど、昨季の名古屋グランパス戦(第32節)で、徳田(誉)が決めた(88分の)1点目も同じですよね。ちょっと時間をつくって、また仕掛けて、相手を抜ききらずに少しマイナスのボールを上げました。京都サンガF.C.戦(第35節)のアディショナルタイムに、優磨くんが決めたゴールも、はっきりと中は見ていないですし、空間に上げようと意識したクロスでした。あとは最終節の横浜F・マリノス戦でレオの得点につながった(20分の)場面も。荒木(遼太郎)に出したあのパスも中は見ていなかったですから」

——それだけレベルの高いJ1リーグでは、顔を上げた瞬間に、相手に寄せる隙や対応する時間を与えてしまうことになる?

「一つ動きが遅くなると、すべての状況が変わってしまうんですよね。ホント、コンマ何秒かもしれないですけど、だから見ずに(クロスを)上げるときもあります。繰り返しになりますけど、それだけ今のチームには、中の状況を見ずに上げられるほど、ゴール前に強い選手がそろっているということ。レオがいて、優磨くんがいて、キョウくんがいて、誉も、チャッキー(チャヴリッチ)もいて、時間をつくれればボランチの2人もゴール前に入ってきてくれる。知念(慶)くんも、(三竿)健斗も強いですからね。セットプレーでは植田(直通)くんや(キム)テヒョンもいる。そういうストロングがあるので、上(高いボール)だけでなく下(低いボール)や、転がすだけでなく浮かすボールと、使い分けています」

photo

■やり続ける、背後に抜け出す動きと仕掛ける姿勢

——昨シーズンからアシストする機会やラストパスを送る場面が増えているように、クロスボールを上げるのがうまくなりました。

「たくさん練習しましたからね(苦笑)。最初はめちゃくちゃヘタだったので。繰り返し練習したのと、感覚を身につけたのと、あとは慣れと、結果がついてきたという自信が大きいと思います」

——たくさん練習したとのことですが、どのように改善してきたのでしょうか?

「昨シーズン当初は、ドリブルで突破して、相手を抜いてから上げていたのですが、それでも中とは呼吸が合わなかったんです。それで、監督からも『ラストパスの精度にこだわりたいよね』とアドバイスをもらって、その質を上げるために、もう一つえぐるのか、それとも抜き切らずに上げるのかなどを、映像を見ながらタイミングを図ってきました。それでも最初は結果につながらなかったのですが、自信をつかんだきっかけは、昨シーズン、アウェイで戦った柏レイソル戦(第5節)だったように思います。レオのゴールをアシストできたことが、その後につながりました」

——町田戦で復帰してからは、レーンによってプレーを使い分けているように、頭のなかが整理されているように見えます。サイドに張ってプレーするときと、少し内側にポジションを取るときに意識していることは何でしょうか。

「僕自身が求められているのは、相手の背後に抜け出すことと、相手に仕掛けること。サイドに張っている状況で、いいところにボールが出てくれば、間違いなく仕掛けています。そこは今までも、これからも変わらずに続けていきたいところです。相手とのシステムの噛み合わせによって歪みや凹みができたときに、そこを見逃さずに走り込みたいという思いがあるので。一方で、内側でプレーしているときは、欲を出しすぎずに、自分ができることだけをやるようにしているというか」

——というと?

「僕自身はゲームをつくるようなプレースタイルの選手ではないですから。途中出場した(第9節の)水戸ホーリーホック戦は、相手に退場者が出たあとは引かれる展開になりましたが、その前には中でボールを受けるタイミングがありました。1回は、シンプルに健斗くんにはたいて、もう一度走ってボールをもらいにいきました。もう1回は、相手と相手の間でボールを受けて、ワンタッチで(柴崎)岳くんに落として、そこからまた、走ったと思います。そうやって、シンプルな動きを心がけることでリズムをつくるようにしています。あとは、サイドでは縦にいくのはもちろん、そこは相手も切ってくるので、最近は中へのドリブルや横へのドリブルも効果的だと思って狙うようにしています」

——より周りが見えるようになったことは、右SBを務める濃野公人選手との関係性からもうかがえます。

「2人とも攻撃が好きですからね(笑)。でも、まだまだ2人の関係性に改善の余地はあると思っています。どうしてもお互いに攻撃が好きなので、お互いの動きが被ってしまうときもありますし、彼が走ったときにシンプルに彼を使えば良かったと思うときもありますから。そういったタイミングやお互いの活かし方についても話し合いながらやっています」

——昨シーズンは途中出場から試合の流れを変える役割を担うことが多かったですが、今シーズンはスタートからその役割を担っているように見えます。

「昨シーズンは、僕だけの力ではないですけど、途中から試合に出てきた選手が流れを変えることで、勝った試合がかなり多くありましたよね。でも、前半から相手を圧倒して勝つに越したことはないので、昨シーズンは後半に出していたエネルギーを、自分自身もスタートから出していきたいなと思っています。

何より、スタートで試合に出られれば、よっぽどのことがない限りは前半の45分間は、プレータイムが与えられますよね。それは途中出場するときよりも、確実に多いはず。例えば20〜30分、圧力を掛け続けて相手が嫌がることを、45分以上もやり続けられたら、相手はもっと嫌ですよね。前からのプレッシャーも、プレスバックも、守備で圧力を掛け続けられることが脅威になると思うので、ピッチに立っている限りは、それを続けられたらと思っています」

——できることが増えてきた今、課題は何でしょう。

「相手が引いているときや相手が警戒しているときのプレーには課題があると思っています。狭いスペースのなかで自分に何ができるのか。無理にでも仕掛けるのか、無理にでもクロスを上げるのか、そうした強引さも必要だと思いつつ、シンプルにプレーするそのバランスが大事になってくると思っています。

スペースがないからといって、ボールを下げてばっかりいたら、チームは停滞してしまうので、相手の裏で受けるだけでなく、足元で受けることも意識しながら、相手の読みの裏、さらにその先を突いていきたいと思います」

photo

4月の『FREAKS INTERVIEW』では「RESTART」をテーマに特集。松村優太選手のインタビューに続いて、コラムを掲載。松村選手が5年近くも抱いていた左肩への恐怖心や、手術を経て復帰した今、リスタートを切る思いについて迫っています。

photo

会員登録はこちら

TOPページに戻る